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お夏清十郎比翼塚(慶雲寺)  「お夏清十郎」とは、寛文2年(1662)、播州姫路で実際に起きた駆け落ち事件を題材にした一連の文芸作品の総称のことです。 最も有名なのが井原西鶴の浮世草子『好色五人女』と、これを近松門左衛門が脚色して仕立て上げた人形浄瑠璃です。 この二作を下敷きに島嵜藤村や坪内逍遥など多くの作家が詩集、戯曲、小説、オペラ、映画などに作品化しました。
 伊伝居に接する野里の慶雲寺に二人の霊を慰める比翼塚があります。毎年8月9日に「お夏清十郎まつり」が行われています。
 わたしが子どものころ、夏の3と8の日には慶雲寺からわたしの家の前あたりまでの野里商店街に夜店が立ち並び、カーバイドのまばゆい光の中を浴衣姿の老若男女が大勢そぞろ歩いていました。
野里商店街  明珍さんの工房がある伊伝居から高田賢三の家があった梅ヶ枝町を北端に威徳寺町、芥田撚糸のある大野町、寺町、私の育った鍛冶町、鍵町に至る約1kmの町並み。 姫路城の500m北東を南北に走っています。 生野銀山から姫路城を経て飾磨津に至るメインストリート但馬街道(生野街道)で、このあたりは野里街道(野里筋)と呼ばれました。 往時は大変にぎわった商人の街、職人の街でした。
 幸いにも戦災を受けず、減ったとはいえ、江戸時代からの旧家、明治・大正・昭和の古民家が軒を連ねています。 「うなぎの寝床」と呼ばれる間口が狭く奥に深い町屋が続き、最近、古い町屋のよさを活かした飲食店などが次々と開店し、地図を片手に散策する観光客の姿をよく見かけます。
明珍本舗 伊伝居上之町  甲冑師姫路明珍家は1150年頃に近衛天皇に献上した武具が「音響朗々光明白にして玉の如く類稀なる珍器なり」と称賛され、明珍の姓を賜ったと伝えられています。 その後、千利休より火箸の触れ合う音の涼けさを絶賛され、茶室用火箸の注文を受けるようになりました。
 武具の需要がなくなると火鉢に活路を開き、大正期には志賀直哉の『暗夜行路』にその名が出てくるほど明珍家の火箸は全国に知れ渡りました。 ところが、戦時下に鉄は原材料も道具もすべて供出させられ、敗戦後の混乱期は茶の湯どころではなく、高度成長期には火鉢は石油ストーブに変わっていきました。
 風前の灯火だった明珍家を救ったのが「火箸風鈴」(52代明珍宗理さん発明)です。今や明珍家の火箸や風鈴は、世界的に有名な伝統工芸品、民芸品となっています。
芥田撚糸製造所 大野町  その銘文「国家安康・君臣豊楽」が大坂の陣、豊臣家滅亡のきっかけとなった方広寺の梵鐘を鋳造した鋳物師の頭領芥田五郎右衛門の末裔が今も住まわれていると聞きます。 家屋は国登録有形文化財になっています。
 すぐ南東には広大な邸宅と工房があったらしく五郎右衛門邸という町名が残っています。
町屋を活かしたお店の一例
「うどん屋 麦(ばく)」
 野里街道鍛冶町にあります。腰の強い手打ちの讃岐うどんと本格的五島うどんで大人気。 出汁か醤油か、温か冷かを選択、天ぷらの種類などトッピングのチョイスもできて楽しい。
 定休日:火・水 (イベント出店のため臨時休業あり)
 営業時間
 11:30〜14:00
 18:00〜21:00
 (昼・夜ラストオーダー30分前)
 (麺切れ終了)
 〒670-0871 姫路市鍛冶町2  079-227-7997
伊伝居のカフェ
「パーランド コーヒー」
 野里街道の1本西のバス通り(祖母のころは「馬車道」と呼んでた)、みなと銀行の角を入ってすぐ右、少し奥まってひっそりと佇むセンスが光るコーヒーとスイーツと軽食のお店。 店主の本や古本の販売コーナーもあります。
 定休日:水・木  営業時間:12:00~18:00
 〒670-0871 姫路市伊伝居8