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落葉松亭日記(2016年3〜4月)


ニュース・評論のスクラップ、凡夫の日々雑感

3月29日(火) 安保関連法・施行

昨年9月成立した安保関連法が施行の運びとなった。
自分の国を守るために、
■自衛隊法
■武力攻撃・存立危機事態法
■重要影響事態法
国際社会の平和と安全を守るために、
■国連平和維持活動協力法(PKO)
■国際平和支援法
などがポイントと云われている。
戦後アメリカに依存してきた国防もこれからはそれ相当の責任を果たさなければならない代わりに、大国の都合で臍を噛むこともない。戦後70年にして真の独立国への出発点ではないだろうか。
次期大統領候補の暴言・トランプ氏は「日本の核保持は否定しない」と云ったそうな。
アメリカも変わりつつある。
菅官房長官「国民を守るために不可欠」 安保関連法施行
http://www.sankei.com/politics/print/160328/plt1603280030-c.html

 菅義偉官房長官は28日の記者会見で、29日施行の安全保障関連法について「わが国を取り巻く安全保障環境が極めて厳しい中、戦争を未然に防ぎ、国民の命と平和な暮らしを守るために不可欠だ」と強調した。

 菅氏は、安保関連法の運用に関して「まず外交を通じて平和を守り、今後も積極的な平和外交を展開していく方針に全く変わりはない」とした上で、「万が一の場合に備え、今後いかなる事態においても、国民の命と平和な暮らしを断固守り抜くことができるよう万全を期したい」と述べた。

 国民の理解を広げる必要性については「(同法成立)当時と比べ、世論調査の結果で賛成が多くなったり、賛成と反対がかなり拮抗してきた」と指摘した。その上で「より一層、法の目的と内容をしっかり説明し、理解を得るようにしたい」と意欲を示した。
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集団的自衛権、行使可能に=駆け付け警護は先送り―安保法、29日施行 17:19時事通信
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-160328X044.html

 集団的自衛権行使の限定容認を柱とする安全保障関連法は29日に施行され、戦後日本の防衛政策を転換する法制が実施段階に入る。北朝鮮の挑発行動や中国の海洋進出など、日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、政府は米国との連携を強化。安保法を踏まえ自衛隊の武器使用などに関する部隊行動基準を策定し、訓練を進める。一方、新たに任務に加わる「駆け付け警護」は、夏の参院選をにらみ当面は実施を見送る。

 安倍晋三首相は28日の参院予算委員会で、安保法について「国民の命を守り抜く責任の下で必要な自衛のための措置は何か、考え抜いた結果だ」と意義を強調。菅義偉官房長官は記者会見で「今後とも、国民の一層の理解をいただけるように説明していきたい」と述べた。

 防衛省では28日、中谷元防衛相も出席して安全保障法制整備検討委員会を開き、安保法の施行後に必要な対応について協議。防衛相は「新たな任務を遂行するため、引き続き慎重を期して準備作業を行い、(隊員への)必要な教育や訓練を進めてほしい」と指示した。

 安保法は、自衛隊法など10本の改正法をまとめた「平和安全法制整備法」と、米軍などへの後方支援を随時可能にする新たな恒久法「国際平和支援法」で構成する。

 集団的自衛権の行使はこれまで禁じられてきたが、安保法施行によって、他国への攻撃が発生し、日本の存立を脅かす明白な危険のある「存立危機事態」と認定されれば行使できる。日本の平和安全に重要な影響を与える「重要影響事態」では、自衛隊が他国軍を支援できるようになり、従来の地理的制約も撤廃される。

 国連平和維持活動(PKO)では、自衛隊が離れた場所にいる他国軍兵士や文民要員を警護する「駆け付け警護」や、他国軍との宿営地共同警備が可能となる。しかし、中谷防衛相は「自衛隊の訓練時間が不足している」として、5月に新たな派遣が予定される南スーダンPKO部隊への新任務付与は見送り、参院選後の秋以降に改めて判断する。

 平時に米軍の艦船などを守る「武器等防護」についても、秋以降に先送りする。自衛隊は運用開始に向けて、具体的な防護対象などをめぐり米軍との協議を本格化させる方針だ。



3月2日(火) 北朝鮮制裁案・安保理へ

北朝鮮のミサイル・核実験に対する制裁案が国連安保理に提出された。
北朝鮮への新制裁案、米が安保理に提出 中国支持 2016年02月26日
http://www.bbc.com/japanese/35666086

米政府は25日、北朝鮮の核実験やミサイル発射に対する新しい制裁決議案を国連安全保障理事会に提出した。制裁を強化する内容を、中国も支持している。採択されれば、北朝鮮へ出入りするすべての貨物に対する国連加盟国の検査を義務付けるのは初めてとなる。採決は週末に行われる見通し。
サマンサ・パワー米国連大使は、北朝鮮に対して20年来で最も厳しい安保理制裁になると述べた。

「史上初めて、北朝鮮に出入りするすべての貨物について、検査が義務化される。一連の制裁が採択されれば、北朝鮮政府に明確で揺るぎないメッセージとなるはずだ。世界は、あなたたちによる核拡散を容認しない、あなたたちの行動には代償が伴うと」とパワー大使は強調した。
新しい制裁では、北朝鮮が世界中の港に禁輸品を運ぶことができなくなり、小型武器も禁輸措置の対象となる。
さらに、北朝鮮からの石炭、鉄、金、チタニウム、希土類(レアアース)の輸入も禁止されるほか、ロケット燃料を含む航空燃料の提供も禁止となる。

北朝鮮による1月の核実験と2月の長距離ロケット発射について、あからさまな国連決議違反だと多くの国が批判した。
中国は批判する一方で、これまでは隣国で友好関係にある北朝鮮の安定を脅かすような制裁措置には慎重な姿勢を示してきた。

北朝鮮制裁については、数週間におよぶ米中協議を経て、ワシントンでジョン・ケリー米国務長官と王毅中国外相が最終的に合意に達したことから、25日の制裁決議案提出となった。
北朝鮮は、ミサイル計画は純粋に科学的な目的だと主張している。しかし、米国や韓国に加えて、北朝鮮の友好国である中国でさえも、ロケット発射は大陸間弾道ミサイルの開発が目的だと考えている。
1月の北朝鮮の核実験は、2006年以来4回目。北朝鮮は水爆実験だと主張している。

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル 第224号(2月28日)
http://melma.com/backnumber_190875/

南シナ海と北朝鮮

 北朝鮮への安保理制裁決議について、漸く米中が合意した。北朝鮮が弾道弾実験をしてから、2週間以上、核実験をしてから1カ月半以上も経っての合意である。国際社会は冷めたピザを食べることになったと思っていたら、今度はロシアがごねている。配達されるピザは冷めたどころか、冷凍されることになりそうである。
 中国はこれだけごねて、何を得たか?
言うまでもなく南シナ海の軍事化だ。中国軍がパラセル諸島(西沙)に地対空ミサイルを配備したと報ぜられたのは今月14日だ。
翌日、オバマ大統領がアセアン首脳をカルフォルニアに集めて南シナ海問題を討議したが、「そんな会議を前にして中国は、なぜ挑発するような真似をするのか?」と訝る向きもあった。
 だが結果を見れば答えは明らかだ。中国は米アセアン首脳会議を睨んで軍事配備したのではない。23日に中国の王毅外相はケリー米国務長官とワシントンで会談したが、米国は対北制裁合意の見返りに南シナ海軍事化を容認せざるを得なかった。
中国が当初から狙っていたのは、これだったのだ。
 そうと分かれば、ロシアだって制裁合意の見返りに米国から何らかの譲歩を引き出そうとするのは当然の成り行きであろう。

 日本では、将来、日本初の女性首相を目指す与党議員が「南シナ海は日本に関係ない」という様な発言をしてしまう平和ボケが続いているから、これがどうして日本の脅威になるのか、解説しておかなければならないだろう。
 中国はパラセル諸島に既に戦闘機を配備した。ここは南シナ海の西側であり、以前にも一時的に戦闘機が配備されたことがある。だが南シナ海の中央のスプラトリー(南沙)諸島の人工島に飛行場は完成しており、ここに戦闘機が配備されるのは時間の問題だ。

 そうなれば、中国は南シナ海全域にいつでも防空識別区の設定を宣言できる態勢になる。航空自衛隊は日本周辺に防空識別圏を設定している。圏と区の一字違いだが、この違いは重大だ。
日本の識別圏は領空を意味しないが中国の識別区は領空を意味しているのだ。

 2013年に中国は東シナ海に防空識別区を設定したが、その際、各国の民間航空会社にそこの飛行計画の提出を要求した。南シナ海に防空識別区を設定すれば当然、その空域を飛行する民間航空機の飛行計画の提出も要求するだろう。
 飛行計画の提出が義務化されれば、中国は飛行計画の変更を要求できる。例えば日航や全日空に飛行経路の変更を要求できる訳だ。これは国際法上許されない行為だが、突然言い出されたら、民間航空会社は困惑してしまう。結局政府間交渉に委ねるしかなくなり、その交渉の席で中国は飛行計画を承認する見返りを要求できる訳だ。

 つまり南シナ海の軍事化は、日米に対する強力な外交カードを中国に与えるのである。
米国は現在、中国に対して防空識別区の設定をしないように要求している。
だがスプラトリーへの戦闘機配備に対しても武力行使をしないと見られる。
 戦闘機が配備されれば、米国で政権が代わる頃を狙って防空識別区の設定を宣言するかも知れない。米新政権も断固それを望まないというのであれば、設定を延期する見返りを中国は米国に要求できる。
 おそらく、その時になってオバマ政権が中国の南シナ海の軍事化を容認したのは、間違いだったと国際社会は気付くのであろう。

軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
動画配信中:「地図で見る第二次世界大戦」
http://www.nicovideo.jp/watch/1441391428
文庫新刊:「図解大づかみ第二次世界大戦」
http://www.kadokawa.co.jp/product/321502000376/
著書:
「領土の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=321212000089
「国防の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201203000167
「戦争の常識」(文春新書)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166604265
「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)
監修:
「イラスト図解 戦闘機」
http://www.tg-net.co.jp/item/4528019388.html
「超図解でよくわかる!現代のミサイル」
http://www.tg-net.co.jp/item/486298102X.html?isAZ=true
インターネット動画配信中:
「現代戦闘機ファイル」
http://www.nicovideo.jp/watch/1411697197
「よくわかる!ミサイル白書」
http://www.nicovideo.jp/watch/1383640409
上解説に依れば、米は中国に合意を求めたが、中国は見返りに南シナ海の軍拡を米に容認させた。
中共は北朝鮮の核実験をネタにちゃっかりと米から譲歩を引き出した。
中共・北朝鮮が蜜月の時もあったから、裏はわからない。