落葉松亭・表紙へ / 2016年3月〜4月 / 2016年7月〜8月

落葉松亭日記(2016年5月〜6月)

ニュース・評論のスクラップ、凡夫の日々雑感

6月29日(水) 共産「防衛費は人を殺す予算」

共産党の藤野政策委員長がNHK番組で「防衛費は人を殺す予算」と発言したそうな。
多方面から厳しい批判を受け、氏は責任をとり辞任することになった。
選挙も近いこともあり、野党共闘?する上で都合が悪かったことは自明。
もともと共産党は九条の完全実施、自衛隊の解消を綱領にしており、常々思っていることを表明したに過ぎない。
唯々選挙のための共闘だと云うことがバレてしまっている。

それにしても、中国の南シナ海・東シナ海の軍拡はひどくなる一方だ。
東シナ海は海も空も一触即発の状態だという。
中国は様々な挑発を繰り返し日本政府の反応を見ているが、有効な外交手段もない。
このままではやがて中国の実効支配に進んでいくのではないか。
東シナ海で一触即発の危機、ついに中国が軍事行動
中国機のミサイル攻撃を避けようと、自衛隊機が自己防御装置作動

2016.6.28(火) 織田 邦男
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47196

 6月9日、中国海軍ジャンカイ級フリゲート艦1隻が尖閣諸島周辺の接続水域に侵入した。これまで公船(海警)が接続水域や領海に侵入してくることは、しばしばあったが、中国海軍が尖閣諸島周辺の接続水域に入ったのは初めてである。

 その6日後の15日、今度は中国海軍ドンディアオ級情報収集艦が口永良部周辺の領海を侵犯した。2004年、中国海軍漢級原子力潜水艦が先島諸島周辺の領海を侵犯して以来、2回目の事案である。・・・・



6月25日(土) 英・EU脱退

英国がEU(欧州連合)から離脱した。
EUとは http://www.euinjapan.jp/union/what-is-history/

欧州連合(EU)は、独特な経済的および政治的協力関係を持つ民主主義国家の集まりである。EU加盟国はみな主権国家であるが、その主権の一部を他の機構に譲るという、世界で他に類を見ない仕組みに基づく共同体を作っている。現在28カ国が加盟している。

EUの人口は今や5 億人を超え、EUはすべての欧州市民に平和、繁栄および自由を保障するとともに、平和構築や開発援助などを通じ、世界の平和と安定に積極的に貢献することを目指している。
・・・
EU理念
「多様性の中の統合(United in diversity)で、多くの主権国家、言語、文化をそれぞれ尊重しながら統合を進める」
・・・
国民投票で離脱派が上回った。
国論が二分するという一大事が国民投票で決まるというのは怖い。
17日英の野党女性議員(EU残留派)が殺害されるという事件があった。
これをきっかけに移民などグローバル化を問題とする国も増えるのではないだろうか。
幸い日本はまだ大々的な移民国家ではないが、政府は移民や外国人労働者の拡大をはかっているという。(経産省HP資料)。
選挙も近いことだし、注意点だろう。

■英国EU離脱は、英国の終わり、欧州の衰退、世界の停滞をもたらす
2016年06月24日(金)19時32分
http://www.newsweekjapan.jp/obata/2016/06/eu.php

■EU離脱派勝利が示す国民投票の怖さとキャメロンの罪
2016年06月24日(金)17時29分
http://www.newsweekjapan.jp/kimura/2016/06/post-13.php

■英国がEU離脱!移民拒否!国民投票で移民受け入れにNO!
目先の経済より主権や雇用や治安を選択
http://deliciousicecoffee.blog28.fc2.com/blog-date-20160624.html


6月24日(金) 北朝鮮ミサイル

北朝鮮がまたミサイル発射を行った。
今回は高度1400km以上あげ、大気圏再突入の耐熱性、飛行安定性を確認したという。
ムスダンは今年三月のノドンの射程距離(1300km)よりは長く3000km以上になるという。
「オオカミ少年」の如く「またかい」とつい思ってしまうのだが、やはり性能はアップしているらしい。

■北朝鮮、ミサイル発射「成功」 メディア報道
2016/6/23 10:55 (2016/6/23 13:44更新)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM23H2W_T20C16A6MM0000/

前回は失敗
■北ムスダン、また失敗…今回は飛ばず
2016年06月01日08時53分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/382/216382.html?servcode=500§code=500

北朝鮮ミサイルの背景
鍛冶俊樹の軍事ジャーナル 第240号(6月24日)
http://melma.com/backnumber_190875_6384561/

北朝鮮の成功

 北朝鮮が漸く中距離弾道弾ムスダンの発射実験に成功した。ムスダンは既に実戦配備されており、開発途上ではない。だから6発撃って、漸く成功したと大喜びしているのは奇妙な光景である。既に配備されている内の6分の5は不良品だと証明されたようなものなのだ。
 北朝鮮外務省の副局長は「米国がどんな核戦争を強要しても堂々と相手ができる」と北京で記者に語ったが、ムスダンがほとんど使い物にならないと証明されたのに、どうしてこうした発言が出るのか?

 ムスダンは2010年10月10日、朝鮮労働党65周年の軍事パレードで初めて披露された。このとき、金正恩は父、金正日総書記の横で閲兵している。金正日はこの前々月、中国を訪問し、その5か月前にも訪中し、子息、金正恩が後継者として承認されるべく中国首脳に挨拶に回っていた。
 つまりムスダンは中国からの金正恩への贈り物で、中身は中国製と見てよい。当初からグアム島の米軍基地を攻撃できる最新式のミサイルと鳴り物入りで報道されたが、程なくして北朝鮮内部から「それほどの性能ではない」という情報が流出した。
 早い話が、中国は欠陥品を供与したのである。これは中露がよくやる手で、最初、無償で製品を供与し、後から莫大な修理改修費を要求して元を取る、武器だけでなく民間ビジネスでもしばしば見られるボッタクリ商法の一つである。

 だが、北朝鮮の経済状況から見て高額な修理改修費を払える筈はないから、欠陥品をそのまま実戦配備したのであろう。その後、核ミサイル開発を巡って中朝関係がこじれて、北朝鮮は中国から本格的な経済制裁を受けるに至った。
 ところが、今年になって米中の南シナ海の覇権争いが表面化した。そこで経済制裁を解除して貰いたい北朝鮮は、一計を講じて「もし、米中が戦争になったら北朝鮮は中国の側に立ってグアム島の米軍基地を攻撃してもいい」と密かに提案した。
 これが今年の4月15日、祖父金日成の誕生日にムスダンを発射した理由だ。もとより欠陥品だから失敗して当たり前。だがもし、修理改修されれば米軍にとって圧力になることに、中国はすぐに気が付く。

   米軍攻撃機A10が4機、南シナ海スカボロー礁付近を飛行したのが4月19日、これを米軍が発表した翌日の4月28日に、北朝鮮は再びムスダン2発を発射、無論失敗だが、北朝鮮が何を言おうとしているか、中国に取ってはもはや一目瞭然だ。
 5月31日、北朝鮮の労働党副委員長が、訪中するが、その朝にもムスダン2発やはり失敗、翌6月1日、副委員長は中国の習近平主席と会談した。「習主席は北にミサイル発射の自制を促した」と公表されたが、経済制裁を実施している段階で習が北の幹部に会えば、制裁解除以外の話題がある訳はない。
 おそらく北朝鮮は6か国協議再開に合意し、中国はムスダンの修理改修を約束したのだろう。
果たして22日、6か国会議が北京で開催され、その日、ムスダンの成功が確認された。
翌23日、朝鮮中央通信は金正恩が側近らと共に大喜びする写真を掲載した。偽らざる心境であろう。

軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
動画配信中:「地図で見る第二次世界大戦」
http://www.nicovideo.jp/watch/1441391428
文庫新刊:「図解大づかみ第二次世界大戦」
http://www.kadokawa.co.jp/product/321502000376/
著書:
「領土の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=321212000089
「国防の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201203000167
「戦争の常識」(文春新書)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166604265
「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)
監修:
「イラスト図解 戦闘機」
http://www.tg-net.co.jp/item/4528019388.html
「超図解でよくわかる!現代のミサイル」
http://www.tg-net.co.jp/item/486298102X.html?isAZ=true
インターネット動画配信中:
「現代戦闘機ファイル」
http://www.nicovideo.jp/watch/1411697197
「よくわかる!ミサイル白書」
http://www.nicovideo.jp/watch/1383640409



5月30日(月) トランプ 3

米国のトランプ熱は本物らしい。
宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成28年(2016)5月30日(月曜日)弐 通算第4912号 
http://melma.com/backnumber_45206/

トランプへの熱気、熱狂は本物だった
  クリントン候補に勝てるとする世論調査が圧倒的に


 ちょうど伊勢志摩サミットとオバマ大統領の広島訪問というビッグニュースの期間、アメリカにいた。
日本にいると分からないアメリカの空気、人々の臭い、現場でしか感じられないことがある。
とくに日本の新聞報道がおかしいと日頃から感じている者にとっては現場を見ないことにはなんともならない。

 移民、男女差、イスラムへの偏見、TPP反対、環境協定離脱、中国製品への課税など、荒々しいスローガンを並べたため、ヒスパニック、チカノの反感は根強く、またアジア系移民、ムスリムの多くはいまもヒラリー支持を鮮明にしている。
しかしリベラル派の若者たちは大学授業料無料をさけぶサンダースへあつまり、民主党の分裂状態は、共和党より劣悪である。ひょっとしてサンダースは民主党大会で指名を得られない場合、独立党から出るのではないかという不安を口にするひとも増えた。

 たしかにオバマの広島訪問はニューヨークタイムズも、ウォールストリートジャーナルも一面トップで報じていたが、テレビニュースをみていると、真っ先に映し出されるのがトランプの動向、ついでヒラリーとサンダースである。
 順番が変わっているのだ。
 おりしも5月25日あたりからアメリカの各世論調査は、トランプがヒラリーとの差を縮めたばかりか、「逆転した」と報じた。熱狂ぶりが異なるのである。ヒラリーはサンダースの猛追にくわえてのFBI聴聞が報じられ、ほぼ「失速」気味である。

 トランプの選挙本部はNY五番街57丁目の摩天楼=トランプタワーだが、テレビの中継車がビルの前に何台も常駐しており、その周りをパトカー。そして常に群衆があつまって騒いでいる。
 一方、ヒラリーの選挙本部はNYクイーンズのピエールワン・プラザビルにあるのだが、行ってみても、周囲に人影もなく、ポスターさえない。
サンダーズ本部はバーモント州である。

 そしてトランプは政治資金の献金を本格的に開始し、集金パーティを連続開催、それもトランプと並んでの記念写真は25000ドル!!
 町では顔がくるくる動くトランプ人形が売り出され、40ドルもするのに飛ぶような売れ行きだ。
ところがこの人形、老舗バーニー社のデザインだがメイドイン・チャイナなのはご愛敬。書店にいけば、トランプ自伝を含め、関連書籍が十種もでているうえ、TIMEが別冊のトランプ特集号(14ドル99セント)を出した。
他方、ヒラリー本は本人の自伝一冊、サンダース本は見あたらなかった。どうやらトランプ現象、一時的ではない。奔流になりそうな勢いと見た。

 TIMEが書いた。
 「1950年の失業率は40%台だった。十年後に4・5%に改善され、多くの家庭では購買力が30%近く伸びたことを実感できた。2008年に起きたリッセッションから、ようやくアメリカ経済は持ち直したが、この間に所得が31%増えたのは僅か1%の富裕層でしかなく、残り99%は、所得が0・4%増に留まった」(同誌、16年5月30日号)。
 トランプを支持する75%のアメリカ人は「所得格差の是正」とその理由に挙げている。

移民、有色人種への偏見、男尊女卑傾向が見え見えのトランプ。
もし当選すれば白人優位政策へ先祖返りの虞がある。
日本には「自分のことは自分で守れ、核も持っていいぞ」と主張する。
米国全体では白人が八割だが、カリフォルニア州のように非ヒスパニック系アメリカ人が過半数を割ったところもある。これがトランプが支持されるゆえんだろうか。
「加瀬英明のコラム」メールマガジン 2016年5月27日
http://www.kase-hideaki.co.jp/magbbs/magbbs.cgi

トランプ現象にはやくもオタオタ
私は日本を守るために、外務省を解体して、建て直したほうがよいと思う。

この2月に、日本人が委員長をつとめる国連女性差別撤廃委員会が、日本が十数万人のアジアの無辜の娘たちを拉致して、性奴隷となることを強いたという、怪しげな報告書を発表した。
報告書は皇位の男系による継承も、差別として非難していたが、さすがに外務省が強く反発したために、削除された。
日本が女狩りして性奴隷としたという誹謗は、1992年の河野官房長官談話に端を発しているが、外国政府や、国際機関が繰り返すごとに、日本が非道な国だというイメージが、世界に定着してきた。

これは、由々しいことだ。日本が万一、危機に陥ることがあった場合に、国際社会から援けてもらわねばならないが、日本がおぞましい国だとなったら、誰も救おうとしないだろう。
この国連委員会の委員長は、福田康夫内閣の時に外務省が国連に推選して送り込んだ女性活動家で、それまでは政府の男女共同参画社会の推進役をつとめていた。
あるいは、国連人権関連委員会が2008年から14年まで、4回にわたって、沖縄住民が日本における少数民族であり、日本民族から迫害を蒙って、人権、言葉、文化などを奪われてきたという報告書を発表して、是正するように勧告してきた。外務省は一度も反論せず、撤回を要求することもなかった。

中国は沖縄を奪おうと狙って、中国国内に琉球共和国(憲法、国旗も発表)政府が置かれ、沖縄住民が中華民族であると唱えてきた。このような国連委員会の勧告は、中国を力づけるものだ。
沖縄住民は疑いもなく、日本人だ。沖縄方言は、さらに本島南部、北部、宮古、八重山、南奄美、北奄美など、多くの方言に分かれるが、日本語である。

この突飛だとしかいえない、国連委員会の勧告のもとをつくったのは、日本人グループであって、外務省の多年の御用(ペット)学者の武者小路公秀氏が理事長をつとめる、「反差別国際運動」が中心となった。
武者小路氏は金日成主席以来、北朝鮮を礼讃してきたことによっても知られるが、1976年には外務省の推薦によって、東京の国連大学副学長に就任している。
今年4月に、沖縄選出の宮崎政久議員(自民党)が衆院内閣委員会で、この国連委員会の勧告について質問し、木原誠二外務副大臣が政府として撤回するように働きかけることを、はじめて約束した。

相手国の代弁者たち

このような例は、枚挙にいとまがない。外務省は多年にわたって、日本を深く傷つけてきた。
日本とアメリカの外務省と国務省には、奇妙な共通点がある。日本の外務省は、別名「霞ヶ関」と呼ばれる。

国務省はホワイトハウスと、ポトマック川のあいだにある。ワシントンはアメリカが独立した直後の1800年に、湿気がひどい泥地に建設されたが、国務省がつくられたところは、とくに霧が立ち籠めるために、「フォギー・ボトム」(霧の底)と呼ばれてきた。

もう一つの共通点は、両国とも外交官が他の省庁から嫌われていることだ。
霞も霧も、大気中に漂う微細な水滴であって、視界を曇らせる。アメリカでも、国務省のキャリアの外交官は、外国贔屓となって国益を忘れやすいといって、胡散(うさん)臭い眼で見られている。
外交官の宿痾か、職業病だろうが、ある外国を専門とすると、その国に魅せられてしまうことだ。
その国の代弁者になる罠に、落ちる。
もし、私がある南洋の新興国の文化と言語に打ち込んで、外交官となったら、きっと首狩り習俗や、食人習慣まで含めて、その国に強い親近感をいだくことになろう。その国に気触(かぶ)れてしまい、日本の国益を二の次にするようになる。
わが外務省にも気の毒なことに、国籍不明になった犠牲者が多い。

もっとも、日本の外務省のほうが、病いが重い。
日本が犯罪国家だという幻想にとらわれて、謝罪することが、外交官のつとめであると、思い込んでいる。
中国、韓国を増長させて、日中、日韓関係を悪化させてきた。責任は外務省にある。
外務省員の多くの者が、日本に誇りをいだくことが、まったくない。
外交研修所における教育が、悪いからだろう。

1992年8月に、宮沢内閣が天皇ご訪中について、有識者から首相官邸において個別に意見を聴取したが、私はその1人として招かれた。
私は「陛下が外国に行幸(ぎょうこう)されるのは、日本を代表してその国を祝福されるためにお出かけになられるものだが、中国のように国内で人権を蹂躙(じゅうりん)している国はふさわしくない」と、反対意見を述べた。
その前月に、外務省の樽井澄夫中国課長が、私の事務所にやってきた。「私は官費で、中国に留学しました。その時から、日中友好に生涯を捧げることを誓ってきました。官邸にお出掛けになる時には、天皇御訪中に反対なさらないで下さい」と、懇願した。

私が中国の人権抑圧問題を尋ねると、「中国に人権なんて、ありません」と、悪びれずに言ってのけ、水爆実験をめぐる問題についても、「軍部が中央の言うことを、聞かずにやったことです」と、答えた。
私が「あなたが日中友好に生涯を捧げるというのは個人的なことで、日本の国益とまったく関わりがないことです。私は御訪中に反対します」というと、悄然として帰っていった。
外国の代弁者になってしまう、不幸な例だった。

理路整然たるバカ

私は41歳のときに、福田赳夫内閣が発足して、第1回福田・カーター会談を控えて、最後の詰めを行うことを頼まれた。首相特別顧問の肩書きを貰って、ワシントンに入った。
私はカーター大統領の後見役だった、民主党の元副大統領のハンフリー上院議員や、カーター政権の国家安全会議(NSC)特別補佐官となった、ブレジンスキ教授と親しかった。
内閣発足後に、園田直官房長官から日米首脳会談に当たって、共同声明の“目玉”になるものがないか、相談を受けた。

私は園田官房長官に“秘策”を授けた。日本はこの時に、すでに経済大国となっていたが、日本のマスコミが、毎年「一人当たり所得ではベネズエラ以下」と報じていた。
私は日米共同声明でカーター大統領に「日本は国連安保理事会常任理事国となる資格があり、支持するといわせることができる」と、いった。
総理も「それだ」ということになった。

そのうえで、山崎敏夫アメリカ局長と会った。
すると「そのようなことが、できるはずがありません」と、冷やかにあしらわれた。
私は首脳会談へ向けて、両国が打ち合わせた記録――トーキング・ペーパーを見せてほしいと求めたが、峻拒された。
「役割分担でゆきましよう」と促したが、木で鼻を括(くく)ったような態度で終始した。
トーキング・ペーパーのほうは、発つ前に鳩山威一郎外相に見せてもらって、凌(しの)いだ。
私は総理一行がワシントン入りした前日に着いて、ホワイトハウス、国務省、国防省などをまわった。出発前に電話で話をまとめていたから、念押しのようなものだった。
翌日、ホワイトハウスの前にある迎賓館(ブレアハウス)で、総理一行と合流して、首尾よくいったことを報告した。

福田カーター会談の共同声明では、私の献策が目玉になった。

私は2つの内閣で、園田外相の顧問として、アメリカにたびたびお伴した。園田外相は“ハト派”で、私は“タカ派”だったが、妙に気が合った。園田氏は外務官僚を「理路整然たるバカ」と、呼んだ。

占領以来の大罪

最後に首相特別顧問の肩書きを貰ったのは、中曽根内閣だった。私の外務省とのおつきあいは、長い。
外務省には、日本が占領下にあった時代から、大罪がある。
ニューヨークのマンハッタンに本部がある正しくは「連合国」と呼ばれる「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」を、意図的に「国際連合」と誤訳してきたことだ。「国際連合」と誤訳することによって、日本国憲法と並んで、戦後の日本国民の世界観を大きく歪めてきた。
「国際連合」と誤まって呼ぶ「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」は、日本が連合国を相手にして、まだ戦っていた昭和20(1945)年6月に、サンフランシスコにおいて創立された。
外務省が「国際連合憲章」と誤訳している「チャーター・オブ・ジ・ユナイテッド・ネーションズ」が、この時、日本と戦っていた51ヶ国の原加盟国によって調印された。
世界のなかで日本ほど、国連に対する憧れが、強い国はない。
だが、困ったことに、「国際連合」という国際機構は、世界中どこを捜しても存在していない。

今日でも「国連憲章」は、外務省による正訳によれば、「われら連合国の人民は‥‥」と始まっている。原文は「ウィー・ザ・ピープルズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ネーションズ‥‥」だが、「連合国」と正しく訳されている。
ところが、「ザ・チャーター・オブ・ジ・ユナイテッド・ネーションズ」を、「国際連合憲章」と訳している。同じ言葉であるのに、奇妙だ。
「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」の正しい名称は、「連合国」なのだ。

ヒラリー頼みの外務省

連合国の公用語である中国語では、「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」は「連合国(リエンホーグオ)」だし、南北朝鮮も「連合国(ヨナプグク)」と呼んでいる。同じ敗戦国のドイツでも戦った相手である「ディ・フェアインテ・ナツィオネン」(連合国)であり、イタリア語でも「レ・ナツィオニ・ウニテ(連合国)」だ。
「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」という呼称が、連合国を指す言葉として採用されたのは、日本が真珠湾を攻撃した翌月の1月1日のことだった。この日、日本、ドイツ、イタリアなどと戦っていた26ヶ国の代表がワシントンに集まって、「連合国宣言」を発した。
ルーズベルト大統領がこの会議で演説し、日本や、ドイツと戦っている同盟諸国を、「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」と呼ぼうと、提案したことによった。

日本は3年8ヶ月にわたって、「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」、連合国を敵として、戦ったのだった。日本の都市に国際法を踏躙して絨毯爆撃を加えて、非戦闘員を大量に殺戮し、広島、長崎に原爆を投下したのも、「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」の空軍だった。
今日、日本で定着している国連という名称を用いるなら、国連の空軍が非人道きわまる爆撃を加えたのだった。

“国連”が結成された時に憲章によって、加盟資格について「すべての平和愛好国」と規定されたが、日本、ドイツなどの枢軸国に対して宣戦布告していることが、求められた。
そのために、今日でも“国連憲章”に「敵国条項」がある。
外務省も、朝日新聞をはじめとする新聞も、敗戦後の昭和20年10月までは、“国連”を「聯合国」と正訳していた。
「国際聯合」にすり替えたのは、「聯合國」だと、国民が占領軍に敵意をいだきかねないために、戦前の「國際聯盟」をもじって、そう呼び替えたのだった。
都心の青山通りに面して、外務省が多額の国税を投入して誘致した、「国連大学」が聳えている。だが、「連合国大学」であったとしたら、誘致したものだろうか。

「国際連合」と呼んできたために、“国連”を「平和の殿堂」のように崇めている者が多い。
日本国憲法と国連に対する崇拝は、1つのものである。
もし、正しく「連合国」と訳してきたとしたら、日本において国連信仰がひろまることがなかったはずだ。
私は2005年から9年まで、朝日新聞のアメリカ総局長をつとめたK氏と、親しくしているが、ワシントンを訪れると、ホテルにたずねてくれて、朝食をとりながら、情報を交換した。朝日新聞社の奢りだった。
ある時、K氏が「日本から来る人で、あなたぐらい、ワシントンで会いたいという者に、誰でも会える人はいない」と、いった。

私はいまでも、年2回、ワシントンに通っている。

ところが、日本の外務省出身の大使館員は、ワシントンでごく狭い社会のなかで、生活している。国務省ばかりを相手にしているから、他に人脈がまったくない。
霞ヶ関の外務省では、毎朝、省員が登庁すると、全員が跪いて、ヒラリー夫人の勝利を祈っているという。ヒラリー夫人はオバマ政権の国務長官を務めたから、日本国憲法が日本に課している特殊な制約を、よく知ってくれているはずだからだ。
夫人のアジア外交のアドバイザーは、日本担当の国務次官補だったロバート・キャンベルだが、外務省が飼い馴らしてきたから、安心できる。
外務省は“トランプ現象”のようなことが起ると、対応することができずに、狼狽えるほかない。
もっとも、外務省を解体すべきだといっても、できることではない。
そこで、国民が外務省に対して向こう20年か、30年にわたって、保護観察官か、保護司となって、目を光らせて、補導するほかあるまい。



5月26日(木) 伊勢志摩サミット

伊勢志摩サミットが開幕、安倍首相が各国首脳を伊勢神宮で出迎え 2016年05月26日(木)12時19分
http://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2016/05/170587.php

5月26日、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が午前、開幕した。議長国である日本の安倍晋三首相が主要7カ国(G7)首脳を伊勢神宮・内宮前で出迎え、公式日程がスタートした。写真:三重県伊勢市で撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

[伊勢/志摩 26日 ロイター] - 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が26日午前、開幕した。議長国である日本の安倍晋三首相が主要7カ国(G7)首脳を伊勢神宮・内宮前(三重県伊勢市)で出迎え、公式日程がスタートした。
首脳らは、オランド仏大統領をはじめに1人1人がゲートの役割を果たしている宇治橋を渡り、伊勢神宮の神域内に入って行った。各首脳は記念の植樹を行った後、内宮の正殿まで数分間、語り合いながら移動した。
午後には会場となる志摩市賢島のホテルで、世界経済をテーマに最初の討議に入る。中国の景気減速や原油価格の低下などを背景に不透明さを増している世界経済情勢について、議論を交わす予定。

G7が持続的かつ力強い成長への道筋を示すよう明確なメッセージを出すことができるか注目される。
サミットは2日間にわたり、テロや難民問題、海洋安全保障、気候変動などの課題で断続的に議論が行われ、テロ対策の行動計画などを策定する予定。
27日午前には、G7以外の国や国際機関も加わり、アジアの安定や開発問題など、さらに幅広いテーマで討議が行われる。
それらの議論を踏まえ、27日午後に議長である安倍首相が記者会見し、首脳宣言を発表する。 G7の政策協調が演出され、力強いメッセージが出るのかどうかが大きなポイントして、内外から注目されている。
(宮崎亜巳 編集:田巻一彦)

西村眞悟の時事通信 平成28年5月26日(木)
http://www.n-shingo.com/jiji/?page=1203

伊勢志摩と広島・人類の文明への発信

(一)戦争を抑止するために、今こそ、伊勢志摩においてミュンヘンの宥和の逆を宣言すべし

サミットにおけるG7首脳の議論と宣言において強調されるべきことは、 八年ぶりにユーラシア大陸の東端沖の海上にある日本においてサミットが行われることから導かれる。
この大陸の東端の地域は、 地球上で最も危険な核を持つ国際法を守る意識もない 横暴な独裁国家が存在する地域であるからだ。

我が国は、 西太平洋、東シナ海および南シナ海における中国の暴力的台頭に対して 国際社会G7が如何に対抗するか、 北朝鮮の日本人拉致の無法と核ミサイルの過激派への拡散の恐れに対して G7が如何に共同して封じ込めるか、 如何にして拉致被害者を救出するか、 この具体的かつ切実な問題意識を持って サミットの議論をリードし宣言をまとめるべきである。

伊勢志摩サミットにおいては、 独裁者ヒトラーに宥和してチェコのズデーデン地方を引き渡し、 第二次世界大戦の引き金になったミュンヘン会談の教訓を、 今こそG7首脳は想起すべきである。
その教訓とは、 国際法を無視して領土を武力で拡張している独裁者に宥和し甘やかせば、 戦争になる ということである。
よって、伊勢志摩サミットは、中国に対して、 七十八年前のミュンヘンの宥和の逆! かつてイギリスのサッチャー首相がフォークランドをアルゼンチンに奪われた時の宣言、 即ち、 「命にかえても、国際法が暴力に打ち勝つことを示さねばならない」 この宣言を発すべきである。

以上を述べるに留めて、 次ぎに伊勢志摩サミットとオバマ大統領の広島訪問の文明論的意義について述べる。

(二)伊勢志摩サミットと広島の人類の文明における意義

G7首脳とともにおびただしい人数の諸外国の随行者やジャーナリストが伊勢志摩を訪れる。 もちろん彼らは、サミットにおける議論や宣言を世界に発信する。

しかし、それら以上に意義ある発信は、 日本という国の始まりの物語であり、 万世一系の天皇のことである。
即ち、彼らは伊勢神宮とは何かを世界に発信する。
伊勢神宮は、天皇家の祖である天照大{~を祀る社(やしろ)である。
その天照大{~は、天壌無窮の神勅を発し、 この神勅によって、天皇が生まれ、 現在、百二十五代の今上陛下に至る。
これが、現在に至る 日本という国家の起源であり 日本という文明の起源である。

この我が国の天皇と国家の起源から今に至る物語を、 G6の文明に当てはめれば、 紀元前七世紀頃、ローマ建国の父である狼の乳で育った兄弟ラムルスとロムルスの 直系の子孫が、今のイタリア皇帝であるというとてつもないことになる。

まさに、このとてつもないことが、世界に発信されるのである。
G7のなかで、 神秘(神話)と歴史が断絶することなく連続している国家は日本だけである。
そして、G6では一神教の原理主義による妥協無きテロ(殺戮)が繰り返されている。
この文明の行き詰まりを感じているG6の目に、 我が国の和を尊ぶ文明は、西洋の文明に代わって、 世界に新たな和の秩序を開く文明であることを示唆することになる。

フランスの文化人類学者クロード・レビストロースがかつて語ったことが世界に改めて発信される。
「われわれ西洋人にとっては、神話と歴史の間には、ぽっかりと深淵が開いている。
 日本の最大の魅力の一つは、これとは反対に、 そこでは誰もが歴史とも神話とも密接な絆を結んでいられるという点にあるのだ。」
此の観点から観れば、伊勢志摩サミットは人類の文明にとって大きな意義がある。

次ぎにオバマ大統領の広島訪問であるが、 原爆を投下した者と投下された者が、 恩讐を超えて、 原子爆弾の使用が、 「人類の文明を破却するもの」 であるという共通の認識をもつ意義は計り知れない。
そして、既に指摘したが、 原爆投下直後に、それが人類の文明を破却するものであると直ちに見抜いた元首は、 世界で昭和天皇ただお一人であり、 天皇は、人類の文明を守るために、戦を止められたのだ(玉音放送)。
このことは、 天皇が、人類の文明の破却者に堕落しようとするアメリカを救われたということになる。
このこと、オバマ大統領の広島訪問を機会に、 我ら日本人は、自覚を新たにするべきである。

お問い合わせ:西村眞悟事務所
TEL:072-277-4140 E-mail:sakaioffice@n-shingo.com
http://www.n-shingo.com/



5月24日(火) 台湾・蔡英文新総統

5月20日、台湾総統に女性初の蔡英文氏が就任した。
台湾、蔡英文新総統が就任 女性初 2016年05月20日 11:43 発信地:台北/台湾
http://www.afpbb.com/articles/-/3087702

【5月20日 AFP】(写真追加)台湾で20日、民進党の蔡英文(Tsai Ing-wen)氏が総統に就任した。女性総統は台湾で初めて。中国と距離を置く蔡政権の誕生により中国との関係が急激に冷え込んでいる。

 蔡氏は台北(Taipei)市内の総統府で就任宣誓を行った。同氏は1月の台湾総統選で圧勝。国民党の馬英九(Ma Ying-jeou)前政権が8年にわたって進めてきた対中融和路線から転換する方針を示していた。

 馬氏は有権者の間で中国に接近し過ぎているとみられ、支持が急落していた。中国は現在も台湾を自国の領土の一部とみなしている。(c)AFP

西村眞悟の時事通信 平成28年5月23日(月)
http://www.n-shingo.com/jiji/?page=1201

西の蔡英文と東のトランプ

台湾の総統に民進党の蔡英文氏が就任した。

これは、李登輝元総統が、 一九九六年(平成八年)に初めて台湾国民の直接選挙による台湾総統システムを実践して総統に就任し、 四年後の二〇〇〇年の任期満了を以て総統を辞任して、 次の総統も国民の直接選挙によって選ばれるという 「民主主義のサイクル」を完結させたこと。

その結果として、
二〇〇〇年(平成十二年)の総統選挙によって民進党の陳水扁が総統に選ばれ、
二〇〇八年(平成二十年)陳水扁総統の任期満了によって国民党の馬英九が総統に選ばれ、
二〇一六年(平成二十八年)馬英九総統の任期満了によって民進党の蔡英文が総統に選ばれて、
この度の総統就任式に至ったのだ。

一九四九年十月一日、中国共産党の毛沢東は中華人民共和国政府樹立を宣言した。
是によって、大陸での拠点を名実ともに喪失した中国国民党の蒋介石は、 南京の国民党政府を台湾に移転させて中華民国とした。
そして、蒋介石の国民党政府は、一九八九年(平成元年)までの約四十年間、 台湾に戒厳令を布く「白色テロ」による強権によって台湾を支配した。

蒋介石は一九七五年(昭和五十年)四月に死去して息子の蒋経國が総統を引き継ぎ、 一九八八年(昭和六十三年)、蒋経國の死去により副総統の李登輝が総統に就任する。
そして、李登輝は、戒厳令を廃止して、台湾で初めての総統直接選挙実施に向かってゆく。

前記の通り、 総統の直接選挙は、八年後の一九九六年に実施されるのであるが、 この直接選挙によって選ばれた総統は何処の総統なのかといえば、 それはまさしく、「台湾の総統」である。
もはや、蒋介石および蒋経國時代の「大陸を含む中国の総統」ではない。
この時、台湾はまさに中国(支那)とは別個の存在となり、 両者は「一つの中国」と「一つの台湾」の関係に入ったのである。
これが台湾史および国際政治史における李登輝の最大の功績である。

李登輝は、 総統就任中も、台湾と中国との関係を「特殊な国と国との関係」としていたが、 総統退任以降は、「台湾」という呼び名の普及に努め、 台湾は中国ではない「台湾という独立国家」であるという主張を明確に展開して 国民意識の覚醒を促し続ける国家的指導者となった。
これが李登輝のアジア史における偉大な足跡である。

この結果、かつて四十年間の戒厳令を布いて台湾を支配していた国民党も、 二〇〇八年に権力に復帰しても馬英九の総統の任期満了に伴って、 次の総統を国民の投票に委ねるほかなく、 本年一月、民進党の蔡英文に敗北してゆくのである。

なお、李登輝氏の総統時の中国との関係を 「特殊な国と国との関係」とした表明は 蔡英文氏の助言によるものと言われている。

五月二十日の、蔡英文新総統の総統就任演説は、 この台湾の歴史の流れを背景にして行われたのだ。
この歴史の流れとは、 「中華世界との訣別」であり「支那的文明の崩壊」である。
従って、その就任演説の最大の特徴は、 台湾は中国の一部とする「一つの中国」原則に言及しなかったことである。
何故なら、台湾は中国(支那)ではないからである。

そして、翌二十一日、蔡政権は、 馬前政権が改訂した「中国色」の強い学習指導要領を廃止すると発表した。
また、蔡政権は、馬政権が対中宥和を進めたために低下した国防力を、 これから増強して「国防自主」の方向に進み始める。
馬政権は、中国の南シナ海におけるスプラットリー諸島埋め立てと軍事基地化の 軍事拡張路線に異議を唱えず、アメリカの「航行の自由作戦」に理解を表明しなかったが、 蔡政権は、国際法の重視を表明しており、 中国の露骨な覇権拡張路線に馬政権のように追随する気配はない。

これに対して中国共産党政府も、 理想的な対応をしている。
即ち、台湾との対話・連絡メカニズムの停止である。
中国政府は、台湾への制裁措置として、台湾からの輸入の制限や、 中国人観光客の台湾渡航制限や他の経済制裁に踏み込むらしい。

そんなこと、どうでもいいではないか。
もともと中国経済は成長の鈍化が激しく、もはや未来はない。 ほっといても輸入は減少している。
また、あのイナゴのような中国人観光客が減少すれば、 台湾人は改めて「台湾人の台湾」のすばらしさを知るであろう。

さて、 以上が我が国とは一衣帯水の西にある海洋国家の台湾で起こっている情勢である。
これから台湾は「国防自主」の方向に向かう。
当然、東シナ海と南シナ海を暴力的に支配下に置こうとする中国と緊張が高まってゆく。
この台湾と我が国の共通の原則と国家戦略は、 自由と民主の原則であり支那に対する自主独立による繁栄の確保である。
ここにおいて、敵の敵は味方であるという言葉を思い起こすまでもなく、 我が国は、この国際状況から、 「国防自主」の努力を続けながら、 台湾と連携して自国の安泰と東アジアの安定を確保することを迫られている。

そのことを確認のうえで、 太平洋の東を眺めれば、 アメリカには、日本や台湾や韓国に対して、 今までのようにただで艦隊や航空機や海兵隊を派遣するのはいやじゃ、 俺たちが必要ならカネを払えと、 非常に分かり易いことを言って大統領候補になった男トランプが出てきた。

しかも、このトランプがモグラのように勝手に出てきたのではない、 あの自分や身内が何をしているのか不明の習近平なら絶対に耐えられない つまりすぐ化けの皮が剥がされる数々の予備選挙をくぐって出てきたのだ。

このように、 西には蔡英文、東にはドナルド・トランプ、 太平洋の西からと東から、 我が国に、「戦後からの脱却」による自主独立と日台米の連携を促す強い動きが胎動し始めたのだ。
後に振りかえれば、 この度の蔡英文の台湾総統就任が、 中国共産党政権の崩壊と東アジアの新時代の幕を開けたものと位置付けられるような気がする。

お問い合わせ:西村眞悟事務所
TEL:072-277-4140 E-mail:sakaioffice@n-shingo.com
http://www.n-shingo.com/

[AC通信:No.592 Andy Chang (2016/05/21)
http://www.melma.com/backnumber_53999

蔡英文総統の就任演説

5月20日に台湾の新政権の式典で蔡英文総統が就任演説をした。新 政権の政策や抱負を述べたものだが、総体的に好意を持って迎えら れ、一般民衆や外国の参加者、メディアから好意的な評価を受けた。 反対や批判はもちろんあったが、中国は台湾統一を主張しているの で台湾人政権に圧力を加えるのは当然で、国内でも國民黨系、急激 独立派などの批判は当然のことだ。

蔡英文はまず最初に台湾の諸問題を挙げて、これらの問題解決に向 けての綱要を発表した。台湾の直面している諸問題とは、年金改革、 教育改革、資源とエネルギー問題、老年層の増加、環境汚染、国家 財政の不足、司法改革、食品安全、貧富格差の増大、社会安全など である。

これら諸問題の解決について蔡英文は新政権の「五大主軸」を述べ た。五大主軸とは、
1.経済構造改革、
2.社会安全網の強化、
3. 社会の公平正義、
4.区域の和平と発展と対中国関係、
5.主軸外 交と世界進出、
である。
安倍政権の「三つの矢」に似た蔡英文の「五 つの主軸」である。

メディアが特に注目したのは対中国関係で、就任前から度々あった 中国の圧力、蔡英文が「一つの中国」と「92共識」に言及するかだ った。だが蔡英文は「中台関係の過去と将来の発展」について述べ ただけであったので直ちに中国と国民党から批判があった。中国は 台湾統一の野心があり、蔡英文の就任で台湾の独立意識が高まるこ とを憂慮しているので、「92共識」と「台湾は中国の一部」を演説 に入れるよう圧力を加えていた。だから中国が不満を表明すること は予期していたことである。

蔡英文が92年から続いて中国との外交交渉についていた真実を述 べたのは正しい歴史である。
台湾は中国の領土ではないが現政権は 中華民国であって台湾ではない。
蔡英文が台湾政府とか、台湾の総 統と述べたら間違いである。

一部の台湾人は蔡英文が台湾政府と言えば独立の表現だと期待して いたが事実は曲げられない。但し蔡英文が南アジア諸国との経済合 作(南進政策)や自主外交の発展を述べ、中国と対話を続けると述べ たのは中国の恫喝を怖れぬと言う態度の表明である。

●経済改革について

台湾の経済は馬英九政権の8年で急激に悪化した。馬英九の親中路 線、ECFA(経済合作協定)などの結果、資本が中国に投入され台湾 が空洞化したのである。蔡英文は新南向政策と貿易の多元性を主張 し、馬政権の単一市場(中国)政策から離脱すると述べた。

また台湾経済の主体性と諸国間の共同と平等性を強調したのは中国 の併呑型経済から抜け出す「脱シナ経済」の主張である。

蔡英文は過去の経済は諸国の技術に頼る代理生産だったが今では限 界に達しているので、以後は自主技術の発展と生産で永続性のある 経済を強調し、限りある資源の保持と環境汚染の防止に努力すると 述べた。

●社会安全問題

社会問題の要点は年金改革、犯罪率の増加、少子化と老人化社会の 問題である。世界諸国も同じような問題を抱えている。これらはい ずれも解決の難しい問題だが、台湾の年金問題は既に破産寸前と伝 えられている。年金問題の解決は焦眉の問題である。

次にあげられるのは犯罪防止と社会安全の強化についてである。凶 悪犯罪の発生は社会の不安を増加させる。民衆の道徳教育、民衆と 警察の関係、民衆と独裁政治の関係、司法不信など、馬政権の放漫 を改善強化することである。

●社会の公平と正義について

台湾の社会問題で特筆すべきは「転型正義」、つまり独裁時代の暴政 や政治犯罪の歴史真相の摘発と解明である。蒋介石政権の特権階級 の略奪、無辜な人民の殺害事件などの解明、証拠隠滅など、真相の 解明、処罰と賠償である。

真相を解明で何が出来るか。処罰と賠償と和解、国民が満足するま で行えるか。複雑で困難な問題であり、長期の調査と正義の執行が 必要である。。特権階級の略奪、警察の横暴、司法の不正など多くの 難問を抱えている。これは台湾人民が新政権に最も期待しているこ とだ。蔡英文が就任演説で社会の公平と正義、転型正義を述べたこ とに期待したい。

●区域の和平と発展

区域とは東南アジアのことである。中国の横暴な侵略がアジア諸国 の不満を募らせているが、馬英九は親中路線で中国の覇権について 或は沈黙し或は加担していた。中国は台湾人の敵であるが在台中国 人は中国に加担していた。中国は台湾独立に反対、武力攻撃で恫喝 している。「現状維持」とは台湾が中国と交渉を続けると同時に平和 と自由民主を主張し、アメリカが中国の侵略防止を表明している状 態のことである。独立を表明しないことが現状維持なのである。

蔡英文の「区域の平和」とは東南アジア諸国と連合して中国の覇権 に対応する、経済と政治で中国に対抗する連合である。
つまり現状 維持とは独立を言わない独立で徐々に台湾の自主性を確立する長期 戦のことだ。

「区域の平和」とは嘗ての大東亜共栄圏と同じである。
蔡英文は「和平の擁護者」と「領土の主権」を主張したのである。

●自主外交の発展

中国は世界各国が中華民国と断交して台湾を孤立させることを強要 してきた。蔡英文の自主外交の発展とは積極的に諸国との外交関係 を回復させることで台湾が中国とは違う国と言う主張である。だが この主張は台湾が中華民国を名乗る限り無効である。

台湾の自主発展は中華民国ではなく台湾国でなければならない。だ が蔡英文が自主外交を主張したことは中華民国を捨てて台湾国に変 身する決心の表明かもしれない。自主発展で正名制憲を実施し、中 華民国から台湾国に変わることが可能か、何時になるかは不明であ る。それでも蔡英文が就任演説で自主外交を表明したことは台湾の 独立願望の表れであると思って見守っていきたい。

AC通信バックナンバーは:http://www.melma.com/backnumber_53999



5月20日(金) トランプ 2

米大統領選ドナルド・トランプ氏に対する評価は二分しているらしいが、共和党の指名を獲得した。
一方のヒラリー・クリントン氏も民主党指名争いで勝利宣言をしている。(20日AFP)
もし大統領になれば夫でもあるあの元クリントン大統領を閣僚に加えると云ったとか。
同盟国米の大統領ともなれば日本にも絶大な影響があるが、相貌や憶測・印象で云わせてもらえば、どちらも諸手を挙げて大歓迎にはなれない。

国内では桝添東京都知事に公私混同の金銭疑惑が次々に暴露されている。
TVタレント時代の印象とはかけ離れ、地に墜ちた感じがある。
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成28年(2016)5月20日(金曜日)通算第4909号 
http://melma.com/backnumber_45206/

ファシズムが米国にやってきた、とネオコンの論客
  ロバート・ケーガンがトランプを「衆愚政治の象徴」と罵倒


 ロバート・ケーガンと言えば米国ネオコンの代表的存在。ブルッキングス研究所研究員であり、毎月『ワシントン・ポスト』に独特なコラムを寄稿する。
彼の著作は日本でも翻訳がある。畏怖による、シングルのパワーによる世界統治を説いて、レーガンブッシュ時代の論壇の一翼を担った。

 そのケーガンが『ワシントン・ポスト』(5月18日)に寄稿し、トランプはヒトラーの再来であり、「ファシズムとは衆愚政治のなれの果て、確乎なる政治信念はなく、つねに衆愚の赴くところに政策を収斂させる」。「トランプは共和党の政治綱領を代弁するなどというのは、お笑い草だ」と罵倒した。

 「民主政治への脅威がトランプであり、イデオロギーも政策もない。彼の言うことは毎日変わる。ところが彼に共鳴する支持者は共和党がどうなるかなどと考えては居ない。共和党そのものは彼に冷ややかであるばかりか、敵対的でさえある」。
 (だとすればヒラリーに猛追するサンダースも同じであるが、民主党には一切触れていない)

 「トランプは国家の不備と不適切さをならべて批判し、熱狂という異様な現象を作り出した。
これを許したのは共和党の怠慢であり、ムスリム、ヒスパニック、中国人をひたすら攻撃し、トランプは熱気を仕立て上げたのだ」とケーガンは続ける。

 「民主政治はときに怒り、興奮、不満をぶちまけるメカニズムを必要とし、だからこそファシズムに転じやすく、民主体制のもと、自由な社会がときに強き指導者を求めるという矛盾に導く」としてトクビルを引用しつつ、続ける。

「まさに『マス』だ」、これぞ「デモクラシー」ではなく「モブクラシー」と呼ぶべき現象なのである、と言い放ったケーガンは「トランプを支持するひとびとは、やがてスターリンが熱狂的な現象のもとに権力を手にするや、かれらが希望した正反対の方向へ走ったように、いずれトランプを撰んだことを後悔するだろう。かれが司法、軍、FBIを掌握したら、いったいどうなるかを誰も考えてはいない。マスは力強きリーダーを勘違いで撰ぼうとしている」。

   「かくて米国にファシズムが到来する」とケーガンは警告するのだが、相当程度にネオコンの逆恨み心情が被さった論評となっている。
 昨日あたりから米国の、たとえばCNNの世論調査では「トランプとヒラリー対決となった場合、トランプが勝つ」とする予測をはじめた。

特集:米大統領選挙2016
http://www.afpbb.com/articles/-/3084925

民主、共和両党候補の指名争いは、民主党はヒラリー・クリントン前国務長官(68)がバーニー・サンダース上院議員(74)を大きく引き離し、指名獲得をほぼ確実にしている。共和党からの立候補者は不動産王のドナルド・トランプ氏(69)のみとなり、同氏の指名獲得が事実上確定した。

特集:米大統領選挙2016

7月18〜21日:共和党党大会
7月25〜28日:民主党党大会
9月26日、10月9日、10月19日:大統領候補討論会
11月8日:一般投票
2017年1月20日:大統領就任式

■イスラム教徒のロンドン市長は例外と繕う
トランプ氏、イスラム教徒の入国禁止でもロンドン市長は「例外」
2016年05月10日 22:12 発信地:ワシントンD.C./米国
政治 特集:米大統領選挙2016
http://www.afpbb.com/articles/-/3086625

■石原慎太郎、亀井静香両氏が吼え返す
石原慎太郎、亀井静香両氏、トランプ氏に挑戦状
【石原慎太郎・亀井静香会見詳報(1)】石原慎太郎、亀井静香両氏、トランプ氏に挑戦状 石原氏「なめたらあかんぜよ」と吠える
http://www.sankei.com/premium/print/160519/prm1605190005-c.html

【石原慎太郎・亀井静香会見詳報(2)】亀井氏「米は反省すべきだと、トランプ氏には申し上げたい!」、石原氏「全部日本製!」
http://www.sankei.com/premium/print/160519/prm1605190006-c.html

【痛快!テキサス親父】トランプ旋風には理由があるんだぜ 日本では伝えられない米国の危機的事情 2016.05.13 ZAKZAK
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160513/dms1605131140010-n1.htm




5月7日(土) トランプ

米次期大統領選の共和党候補、ニューヨークの大富豪ドナルド・トランプ氏は、共和党から他に候補者がいなくなり事実上指名を獲得したという。
ネット上では、氏が吠えるように暴言を繰り返す写真が目につく。
米歴代大統領の風貌と比較すると明らかに異質、米もなにか変わってきたなぁと思う。

トランプ氏は対日政策で下記のような考えを持っている。
■【米大統領選】トランプ氏が対日政策で暴言
「米軍駐留費全額負担に応じなければ撤退、日韓の核武装も容認」(ロイター)
http://www.sankei.com/world/print/160506/wor1605060016-c.html

日韓核武装容認云々は、北の核実験、中国の南北シナ海の不穏な軍拡を見ると日本の核武装も必要になるかも知れないので「暴言」かどうか。米ソ冷戦時代はとっくに終わり、今は米中対峙となった。
米にとって中国は敵なのか仲間なのか、米国民の考えはいかに。
「なんで日本のために我が子の血を流さなければならないのか」「アジア地域への駐留は国益にならず」と考える人々も多かろう。
敗戦後日米軍事同盟が70年続いてきたが、そのありようも「自分のことは自分で」ということに変わるのかも知れない。
米でも判断が分かれているようだ。

共和党下院議長、現時点で「トランプ氏を支持せず」 2016.05.06 Fri posted at 19:00 JST
写真:インタビューに答える共和党のポール・ライアン下院議長
http://www.cnn.co.jp/usa/35082193.html

下院議長、現時点で「トランプ氏を支持せず」

ワシントン(CNN) 米共和党のポール・ライアン下院議長は5日、今秋行われる大統領選で同党からの指名を確実にしている実業家のドナルド・トランプ氏について、現時点で支持できる段階にないことを明らかにした。事実上の指名獲得後、共和党幹部からはトランプ氏を支持しないとの発言が相次いでいるが、ライアン氏はこれらの有力メンバーの中で最も高位の役職にある。

CNNのインタビューに答えたライアン氏は、「(トランプ氏支持に回る)準備が整っていない。今はその段階にない」と述べた。最終的にはトランプ氏を支持し、「党をまとめる一翼を担いたい」との考えを示したものの、そのためにはまずトランプ氏の側から行動を起こしてもらう必要があると指摘した。

ライアン氏はトランプ氏に対し「共和党と保守運動にかかわる全ての派閥を結集させてほしい」と要望。その上で大統領選に向けた取り組みを「米国民が誇りを持って支持し、参加できるものにする」ことを求めた。

トランプ氏を支持できない要因としてイスラム教徒や不法移民に対する同氏の強硬な政策方針が影響しているのかと問われると、ライアン氏は「解決すべき課題だ」と答えた。

これに対しトランプ氏は、同日発表した声明で「今はライアン氏の方針を支持する準備が整っていない。おそらくこの先は、互いに協力できるだろう。そして何が米国民にとって最良なのか、意見を同じくすることになるのではないか」と語った。

トランプ氏は5日夜ウェストバージニア州チャールストンで選挙イベントを行ったが、演説ではライアン氏の発言に言及しなかった。トランプ氏の選挙対策責任者は、ライアン氏による不支持の表明が陣営にとって打撃になるとの見方を否定した。

一方、共和党全国委員会の広報担当者はCNNの取材に対し、ラインス・プリーバス委員長が間に立つことでトランプ氏とライアン氏の会談が実現する可能性を示唆した。

トランプ氏が共和党からの指名を確実とした状況を受け、2012年の大統領選で同党の指名候補となったミット・ロムニー氏は7月にクリーブランドで開催される党大会への出席を拒否する意向を表明した。ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領や息子のジョージ・W・ブッシュ前大統領、2008年に同党指名候補だったジョン・マケイン氏も欠席の意向を示している。

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28年(2016)5月7日(土曜日)弐 通算第4898号
http://melma.com/backnumber_45206/

トランプ現象を読み解く 宮崎正弘

 大統領予備選が進行中の米国で、実業家のドナルド・トランプが共和党レースの先頭を走る。  ジャーナリズムは彼に冷たく非難と罵倒の嵐だ。ところが痛罵、批判の度にトランプ人気は不思議にも上昇した。この奇妙な現象の源泉は何か?
 なぜ「トランプ現象」がいまの米国で出現したのか、特別な社会的変化によって新しい時代への胎動なのか、一時的なテロと難民への反撥でしかないのか。いったい米国は何処へ向かおうとしているのか?

 とりわけ「反知性主義」というトランプ批判が目立つ。なぜなら彼はTPPに反対したり、不法移民排除、イスラム敵視など共和党の主流派、穏健派の神経さえ逆なでしている。
共和党のエスタブリシュメントやメディアの論調とは正反対に「物言わぬ大衆」(サイレント・マジョリティ)のトランプ支持が全米くまなく拡がっているのは米国民の大半がメディアの論調を信じていない証拠でもある。

 異変は続いた。典型がローマ法王の発言だった。「トランプ氏はキリスト教徒ではない」という強いメッセージにアメリカの大衆は支持率アップで応じたのだ。

 トランプ現象の基底にある第一は「反グローバリズム」ではないのか。
 欧州を襲うテロ、シリアからの難民に対してEU指導者たちの無策。その怒りがフランスでルペン率いる国民戦線の大躍進、英国のEU脱退の流れ、ドイツの「ペギータ運動」の勃興を産んだ。そしてドイツの付録のようなオーストリアも、親米派とされたマケドニアも国境にフェンスを築き、夥しい難民の流入を阻止した。

これらはEUの理念に反する政治的措置である。フランスでFN(国民戦線)のマリーヌ・ルペン党首が[イスラム移民排斥」と「国家資本主義」をスローガンに次期大統領の座を目指している。

まさにトランプは、こうした欧州の動きを見ながら「メキシコ国境に壁を構築し、不法移民を阻止せよ」と獅子吼した。
 「反知性主義」とは日本で言えば東大法学部卒のエリートが日本を動かすエスタブリシュメントを形成してきだが、彼らの主知的で官僚的な政治が行き詰まると、学歴のない田中角栄が強引に日本を引っ張ったように、学問、知識は問題ではなく経験豊かな世間智が重要な要素になりうる。

 「シンプルで、パワフルで、トップダウン」の強い指導者像をトランプは売り込み、宣伝戦争においてリベラリズムの攻撃に対して効果的な反撃ができた。

 トランプ現象のもう一つの裏側にある重大要素はWASP(ホワイト、アングロサクソン、プロテスタント)の反撃という特徴である。
この重要なポイントがあまり論議されていない。米国はすでにWASPの国ではなく、トランプはプアホワイトという固定票を越えたWASPの怒り、そしてカソリック・エスタブリシュメントへの反撃が集約されているのである。
共和党大会は7月中旬、トランプが正式候補となるか、どうか。結論はまもなく出る。
(この文章は「北国新聞」こらむ「北風抄」5月2日着けの再録です)