中国は「一帯一路」が思うように進まず、米中貿易戦争で打撃を受け、明らかに後退局面に入った。
安倍訪中で、日本は云いたいことを云えるようになったのではないか。
【日中首脳会談】
日中外交の転機となるか 中国の苦境見透かし、人権・東シナ海で懸念表明2018.10.28 05:01
https://www.sankei.com/politics/news/181028/plt1810280003-n1.html
写真:北京市内の売店に並べられた日中会談について報じる中国紙=27日(共同)
日本の首相として7年ぶりとなる安倍晋三首相の中国公式訪問はおおむね成功したといえる。中国の習近平国家主席、李克強首相らの熱烈な歓迎ムードに乗せられることなく、
ウイグル族弾圧など中国の人権問題や、東シナ海・南シナ海での軍備拡張など懸念を率直にぶつけ、冷や水を浴びせたことは特筆に値する。中国の顔色ばかりをうかがってきた日中外交は転機を迎えている。(原川貴郎)
米中貿易戦争で経済的な打撃を受けている中国にとって、安倍首相とトランプ米大統領が対中外交でも足並みをそろえることだけは何とか避けたい。安倍首相が6年前に首相に返り咲いた後、徹底的に批判を続けてきた中国側が、手のひら返しで安倍首相を歓迎したのは、日米を離反させ、経済協力を引き出したいという思惑があったからだ。
安倍首相はそれを見透かした上で、経済協力とてんびんにかけるように、懸念を率直にぶつけた。
李首相に対しては、ウイグル族弾圧を念頭に「中国国内の人権状況について日本を含む国際社会が注視している」と直言した。この時ばかりは李首相から笑顔が消え、渋い表情だったという。
習主席に、スパイの疑いで拘束されている邦人について「前向きな対応」を求めたことも大きい。習主席は「中国の法令に基づいて適切に対処する」と述べただけだが、トップ会談の議題に上がったことで事態は好転する可能性が出てきた。
安倍首相が習主席、李首相それぞれに提起し、同意を得た3つのコンセプトにも大きな意味がある。
「競争から協調へ」「脅威ではなくパートナー」「自由で公正な貿易体制の発展」-。安倍首相は「新3原則」と名付け、「これからの日中関係の道しるべとなる」とした。今後、中国が、「脅威」となる行動を取ったり、自由・公正な貿易を阻もうとした場合、この新3原則が「錦の御旗」となりえるからだ。
一方、安倍首相の思うように進まなかった案件もある。東シナ海でのガス田共同開発もその一つ。日中両政府は、日中の境界線画定までの措置として、平成20年に共同開発する方針で合意しながら、交渉は止まったままとなっている。
李首相は、安倍首相との会談で交渉再開に前向きな姿勢を示したが、その後、発表された成果文書では「(共同開発の)実施に向けた交渉の早期再開を目指して意思疎通をさらに強化していくことで一致した」と後退してしまった。
河野太郎外相、中国側に尖閣周辺ブイの撤去要求 2018.10.26 23:16
http://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/181026/plt18102623160030-n1.html
河野太郎外相は26日、北京で中国の王毅国務委員兼外相と会談し、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域で中国が設置したブイの撤去を求めた。王氏は直接回答しなかったが、東シナ海問題などを念頭に意見の対立を適切に処理していくよう強調。両者は東シナ海を「平和、協力、友好の海」にしていく決意を確認した。外務省によると、ブイは日本の排他的経済水域(EEZ)内に設置された。(共同)
鍛冶俊樹の軍事ジャーナル第350号(10月28日)
http://melma.com/backnumber_190875/
一帯一路の破綻
今回の安倍総理と習近平主席の北京における会談は、1989年のマルタ島における、ブッシュ、ゴルバチョフの米ソ首脳会談に匹敵する。言う迄もなくこの米ソ会談は、米ソ冷戦の終結を宣言したものであり、米国が対ソ封じ込めから対ソ経済支援に転換した。
そして2年後の1991年にソ連は崩壊した。つまりマルタ島での米ソ会談はソ連の破産宣告に他ならず、ソ連経済が米国の管理下に置かれたのである。同様に今回の日中会談は中国の拡大主義である一帯一路政策の破綻を宣言し、中国経済が日本の管理下に入った訳だ。
米中貿易戦争というと、あたかも米中の貿易を巡るもめ事の様に矮小化されてしまうが、実態は米国を中心とした世界各国による対中包囲である。それは米ソ冷戦が実態としては米国を中心とした世界各国による対ソ封じ込めであったのと同様だ。
日中通貨スワップは、人民元暴落の予防措置だが、SDR入りした筈の通貨が大暴落の予兆に怯えている。つまり世界通貨としてもはや信任されなくなり、日本円の権威にしがみつく形となった。
日本円が何故そんなに権威があるのかといえば、在日米軍により日本の安全が完璧に保障されているからに他ならない。だからこそ、世界的な経済危機に際しては、日本円は値上がりをする。世界中が安全な通貨を求めるのである。要するに人民元は在日米軍の軍門に下ったのだ。
日中第三国市場協力フォーラムは、日本の企業が一帯一路の破産管財人となる民事再生機構である。民事再生とは、日本でもバブル崩壊後の金融危機でお馴染となったが、破綻した企業の切り売りである。つまり日本のハゲタカが中国の死肉をついばみに行った訳だ。
もちろん、こうした日中接近を米国が快く思う筈はないとの警戒論にも一理あるが、安倍総理がトランプの了解なしに動いているとは考えられない。むしろ日米が連携して中国の解体作業に乗り出したと見るべきであろう。
軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
動画配信中:「戦争の常識」第1回無料
http://www.nicovideo.jp/watch/1494517092
上記動画のテキスト本
「戦争の常識」(文春新書)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166604265
動画配信中:「地政学入門」第1回無料
http://www.nicovideo.jp/watch/1475838508
上記動画のテキスト本
「領土の常識」(角川新書)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=321212000089
動画配信中:「地図で見る第二次世界大戦」第1回無料
http://www.nicovideo.jp/watch/1441391428
上記動画のテキスト本
文庫「図解大づかみ第二次世界大戦」
http://www.kadokawa.co.jp/product/321502000376/
動画配信中:「現代戦闘機ファイル」第1回無料
http://www.nicovideo.jp/watch/1411697197
上記動画のテキスト本「イラスト図解 戦闘機」
http://www.tg-net.co.jp/item/4528019388.html
動画配信中「よくわかる!ミサイル白書」第1回無料
http://www.nicovideo.jp/watch/1383640409
上記動画のテキスト本「超図解でよくわかる!現代のミサイル」
http://www.tg-net.co.jp/item/486298102X.html?isAZ=true
2017年12月、韓国で韓国語訳が出版。
その他の著書:
「国防の常識」(角川新書)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201203000167
「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)
2011年初頭、アラブ諸国で失業や独裁政権に抗議する大規模デモが起きた。
「アラブの春」とか「ジャスミン革命」などと呼ばれた。
一時は中国にも波及するかに見えたが、中共は抑えこんだ。
あれから7~8年、現在は・・・
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成30年(2018年)10月12日(金曜日) 通巻第5854号
ジャメール・カショギ、って誰? サウジのジャーナリストが行方不明に
「アラブの春」から「アラブの冬」が到来していた
http://melma.com/backnumber_45206/
チュニジアから始まった「アラブの春」は、まずチュニジアで独裁者ベン・アリが国外へ逃亡、リビアでカダフィ大佐が殺害された。つぎにエジプトへ飛び火し、ムバラク政権が崩壊し、一時的に「イスラム同胞団」の原理主義的政権が誕生したが、やがて軍部によるクーデターで「民主化」の夢はついえた。
「アラブの春」の勢いはここまでだった。
シリアに飛び火した「アラブの春」運動は反動を促し、残酷な戦闘、悲壮な内戦をもたらして、米、NATO、そしてロシアが、トルコが介入して泥沼となった。
シリアの国土は廃墟と化けた。この空隙にISが入り込み、テロ,荒廃、すさまじき死体の山に難民の大量発生、この難民が欧州へ押し寄せ、独仏伊ほかで、ナショナリズムが高まり、EU、ユーロ危機へとつながる「想定外」の結果を運んだ。
ウクライナの反ロシア派の蜂起は、米国の中途半端な介入によってむしろ混沌が増大し、プーチンの権力基盤を固めさせてしまった。
ウクライナ東部は事実上ロシア傘下にはいり、欧米は冷戦時代のように、ロシアを軍事大国として脅威視するまでに逆戻りした。
さてサウジアラビアである。
サルマン皇太子による専制恐怖政治は、有力王子らを監禁して財産を吐き出させる一方、「女性の運転」を認めるジェスチャーで民主化を装いながら、イエーメンに軍事介入して500億ドル余もの軍事費を費消し、アラムコの上場は見送り、次世代経済計画はほとんど白紙に戻りつつあり、そして、カショギ事件だ。
カショギはサウジアラビアの反体制ジャーナリストだが、ワシントンポストへ寄稿者として知られ、トルコのサウジ総領事館へ入ったところまでが確認された。
以後、消息を絶って、「消された」と欧米メディアが騒ぎ、トルコは総領事館への立ち入り捜査を要求した。
この一連の出来事で、ホワイトハウス内部が揺れた。
クシュナーが主導した中東外交が、サウジ王家の専制政治と国際非難の余波を受けて、崩れかけているからだ。
同時にサウジアラビア政治は思わぬ国際的非難と反撃を前に立ち往生となり、サルマン皇太子の政治力に大きな陰りが出た。ということは安定性を欠く状況がくると同義語であり、次の懸念は石油輸出の継続が可能か、どうか。
イランの代理兵としてイエーメンに潜伏する武装集団は、紅海を航行する石油タンカーへミサイル攻撃をしている。サウジはイランへの敵愾心を燃やし、現在の危機的状況を打開、もしくはすり替えるために、軍事行動にでる可能性は否定できない。
つまり「アラブの春」は皮肉にも、「アラブの冬」となった。
とっくに辞めた元首相等があれこれと政治に口を出しているのは見苦しい。
ルーピー鳩山は国外に出てまでホラを吹き、日本を貶めている。
「言論の自由」か何だか知らないが、野放しはいかんだろう。
記事では「失言連発!」となっているが、確信犯の工作員ではないか。
失言連発! 鳩山氏をはじめ元首相らが言いたい放題… 屋山太郎氏「国益損なう、黙っていろ」2018.10.11
https://www.iza.ne.jp/kiji/politics/print/181011/plt18101120300010-c.html
政治の表舞台から引退した元首相の言動が、批判の的になっている。「宇宙人」こと旧民主党の鳩山由紀夫氏だけでなく、自民党の小泉純一郎、福田康夫両氏までもが、国内外で問題発言を繰り返しているのだ。識者は「国益を損ないかねない。黙っていた方がいい」と突き放している。
鳩山氏は2日、韓国・釜山大学で、政治学の名誉博士号を授与された。聯合ニュースによると、記者団と懇談した際、慰安婦問題について、次のような発言をした。
「この問題で重要なのは、韓国国民が納得できる方法で解決を模索することなのです」
日韓両政府は2015年、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」で合意した。日本政府は合意に基づき韓国で設立された「和解・癒やし財団」に10億円を拠出した。ところが、韓国政府が一方的に財団の解散を示唆するなど、合意を反故(ほご)にするような動きを見せている。
鳩山氏は解決済みの合意を蒸し返し、日本の対応を問題視している。あきれ果てるしかない。
福田氏は5日、群馬県で、日中国交正常化45周年を記念して講演した。この中で、南京事件について、「数についての議論をする問題ではない。(事件が)あったことは事実」「中国の全土にどれだけ被害を与えたか、日本人は考えなくてはいけない」と述べた。
「南京事件」については、歴史学者の間で諸説分かれている。
数が問題ではないというなら、日中戦争勃発直後の1937年7月29日、北京東方・通州で日本人114人と、朝鮮人111人が、中国人保安隊に虐殺された「通州事件」についても指摘すべきだろう。
小泉元首相は8日のBS朝日番組で、安倍晋三首相が臨時国会での提示を目指す自民党憲法改正案について、「自民党だけで来年できるわけない。与党、野党が協力しないといけない」「(来年夏の参院選は)改憲を争点にしてはいけない」と語った。
政治評論家の屋山太郎氏は「政治家道を究めた首相経験者が、現在の首相に何か言いたければ、外には分からない手段で『念のために…』と言って、伝えるのが礼儀だ。『そうでなければ、黙っていろ!』と言いたい。福田、小泉両氏は、憲法改正で安倍首相を応援すべき立場でありながら、人ごとのように話すのは卑怯(ひきょう)だ」と嘆いた。
中国の新疆ウイグル自治区で、ウイグル人が中共によって弾圧され滅亡の憂き目に遭っている。
歴史を見てみると、
かつては、中央アジアの平原で遊牧国家を作った時期もあったが、ウイグル帝国が瓦解、モンゴル帝国の支配下に入ったりした。18世紀には清朝に征服され、19世紀には新疆省となった。
20世紀前半、中華民国のもとで東トルキスタン共和国の建国がはかられたが、国共内戦で中国共産党に帰順し、新疆ウイグル自治区となった。
1980年代、民族独立の動きもあったが、中国当局は厳しく取り締まり、2016年、ITによる「完全監視社会」下になっているという。(Wikipedia)
【正論】
「文明の衝突」生むウイグル弾圧 文化人類学者静岡大学教授・楊海英
https://www.sankei.com/column/print/180920/clm1809200004-c.html
写真:静岡大学の楊海英教授(寺河内美奈撮影)2018.9.20 11:30
中国最西端の新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)でウイグル人たちが多数、再教育センターと称される強制収容所に拉致監禁されている。各国の報道によると、その数は優に100万人は超えるという。総人口約900万人のウイグル人にとって、実にその1割程度が完全に自由を失ったことになる。強制収容所内では習近平語録を暗記させられたり、中国の国歌を歌わされたり、場合によっては拷問をかけられて死亡する事態に発展している。
≪人口の逆転で抑圧を強める≫
強制収容所の存在は、ウイグル人の「民族の受難」を物語っている。1944年、パミール高原以東のオアシスと草原地帯でウイグル人とモンゴル人、それにカザフ人の3民族を主体とする民族革命が勃発。中国とは全く別の独立国家が建立され、ソ連邦への加入を理想とする東トルキスタン共和国が成立した。そこへ49年に人民解放軍が進撃。東トルキスタン共和国の指導者たちも毛沢東の招請を受けて北京に向かうが、「飛行機の墜落」で謎の死を遂げる。かくして東トルキスタン共和国は潰(つい)え、漢民族が多数を占める中華人民共和国に編入された。
中国政府がウイグル人にかぶせた「罪」は「民族分裂」と「過激なイスラム信仰」それに「テロ行為」だ。「民族分裂」の事実はなく、多少の抗議活動があっても、それは政府の民族政策に原因があったからだ。
最も典型的な抑圧政策は人口の逆転だ。中国に編入された当初、漢民族はわずか29万人だったのに対し、現在では既に1000万人に達し、先住のウイグル人とカザフ人、それにモンゴル人をはるかに凌駕(りょうが)している。あとからの入植者である漢民族には先住民に対する敬意など毛頭なく、オアシスからウイグル人を追放して屯田し、草原からカザフ人とモンゴル人を放逐して農耕地を開拓している。こうした民族政策に異議を唱えるとすぐさま「民族分裂的活動」だとして弾圧するのが、北京流の「民族自治」である。
≪中国は諸民族の「牢獄」と化した≫
パミール高原以東の住民がイスラムに改宗した時期は遅く、15世紀までのトルファンではモスクと仏教の寺院が向かい合って建つほど、さまざまな宗教が平和共存していた。ウイグル人のイスラム信仰も過激な思想や行動を生んだ事実はなく、土着のシャーマニズム信仰と融合し、異教徒に対しても寛容な態度を取ってきた。その点は、中国人自身が常に「ウイグル人女性は胸を大きく露出した衣装を纏(まと)って踊る」と表現する他者認識にも現れている。
そして「テロ行為」だが、ウイグル人とカザフ人も確かに中国政府の民族政策に不満を爆発させたことはある。1962年春に自治区最西端のイリとタルバガタイ地域に住む少数民族が大挙して越境してソ連領に入った。その数は6万人に達したが、人民公社の公有化政策で貧困化が進み、遊牧民の強制定住が原因だった。
このとき、中国本土で既に4000万人もの漢民族の農民が餓死していた事実が、公有化政策の失敗を雄弁に物語っている。独立ないしはソ連邦の一員になっていたら幸せだった、という見方はウイグル人の脳裏に消えずに残っており、中国は事実上、諸民族にとっての「牢獄(ろうごく)」と化した。
≪「火薬庫」となる新疆問題≫
冷戦崩壊後の国際社会において「地域の政治は民族中心の政治に、世界政治は文明を中心とする政治になる」と、政治学者のサミュエル・ハンチントン教授は96年に「文明の衝突」を上梓(じょうし)して唱えた。
新疆における中国政府とウイグル人などとの対立は、今やまさに文明の衝突の様相を呈しつつある。それはイスラム対儒教、遊牧対農耕、という文明間の対立を背景としている。いくら緩やかな信仰とはいえ、ウイグル人はイスラム世界の一員であるし、弾圧が強まるほど信仰もあつくなる。そして、全世界のイスラム教徒たちの目には、儒教信者が侵入してきて植民地体制を敷いていると映るだろう。
中国政府は国連常任理事国の地位を悪用して、アメリカが主導する国際的な「反テロ」のキャンペーンをウイグル人に適用し、自らの民族弾圧を正当化してきた。カザフ人とモンゴル人も最初は自身に及ばない限り、見て見ぬふりをしてきたが、今やカザフ人もウイグル人と同様な苦境に追い込まれている。国境を隔てて隣国のカザフスタンに住む親族と交流しただけで、逮捕監禁されている。モンゴル人は既に昨年秋から母語による教育権が剥奪されている。
問題は現地に入植した漢民族の人々だ。「物ごいだろうと、エリートだろうと、漢民族は常に政府側に立って民族抑圧政策を擁護する」と識者は指摘する(王力雄『私の西域、君の東トルキスタン』)。漢民族が差別思想を改め、ウイグル人が地域政治の中心とならない限り、新疆問題はますます「文明衝突の火薬庫」に発展するだろう。(文化人類学者静岡大学教授・楊海英 よう かいえい)
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何度か独立の機会が有りながら、陸続きの大陸ならではの栄枯盛衰。
中国当局は、「テロ対策」「国家分裂防止」「過激派取り締まり」などの法律により合法的にウイグル人殲滅をはかっている。その規模はかつてのナチ以上といわれている。
チベットに対する弾圧も同様、中国共産党体制の崩壊が待たれる。
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成30年(2018年)9月7日(金曜日)弐 通巻第5820号
http://melma.com/backnumber_45206/
「危機管理」の見本は、むしろ中国が示したのではないのか
台風21号。関空へ特別バスを仕立て、中国人旅行者を選別し輸送した
関空水没、北海道地震による大停電。日本の危機管理が試された。注目すべきはただちに自衛隊が4000人、救援活動と給水のために出動したこと。24時間以内に24000名の派遣態勢が組まれたことである。
しかし9月10日から予定されていた米海兵隊との共同訓練が中止となった。
国家防衛より、人命救助という日本の戦後のヒューマニズム重視は、時として国家安全保障の根幹に抵触する。戦後レジュームの宿痾だ。
メディアは相変わらず国民の安全保障の優先課題を「ライフラインの確保」(電気、水道、ガス)においた。メディアも交通アクセス、そして原発の被災状況報道を優先し、ついで「被災者」の訴え(当然、行政への不満となる)。自衛隊が真っ先に現場へ行って給水している様子や被災地での危険な任務に就いていることなどはあまり報じない。
定番はガソリンスタンド、スーパーに食料や電池、ガスボンベを買い求める長い列。物流がとまり、保冷庫も電気が来ないので腐食が始まる。
自然災害は日本が台風の通り道であり、火山列島である以上、避けることが出来ないが、日頃の危機管理が杜撰な実態がさらけ出された。
関空水没、北海道大停電を、もし「戦争」と仮定して考えてみると、本当の危機に遭遇したときに、何を一番優先してなさねばならないか、日本の対応はあべこべのケースが多いことを示した。
デジタル社会の到来では通信の確保、電源の確保が重要である。いみじくも、報道では電池切れによる充電器の設置とか、公衆電話の無料開放とかを大きく報じたが、充電設備と公衆電話が不足していることが分かった。
病院船をもたない日本には「移動する病院」という発想がない。また多くの病院には自家発電設備が脆弱であり、糖尿患者などは緊急措置が必要になる。
デジタル文明の下で重要課題は、光ファイバーケーブルの拠点の安全である。
日本の海底ケーブルは、一本の基幹ルートに依存し、補完ルートがない。ここを攻撃されると、ほぼ全ての日本の通信網が破壊される。
関空のケースでは避難ルートが神戸へ向かう高速船が三隻しかなかった。それも定員が110名。海上の人工島に建てた飛行場は三十年で沈没すると当初から予想されたのに、抜本的な代替プランはなく、鉄道などの沖合島へのアクセスは一本の橋梁に頼っていた。
滑走路が水没したとき、駐機していた飛行機は僅か三機、これは不幸中の幸いだった。東北大地震のおり、仙台空港では駐機していた十数機の自衛隊機が失われた。もし、空港がミサイル攻撃を受けたときに、短時間で修復工事ができないという、日本の対応力の弱さもやはり深刻な問題である。
北海道地震でも、おどろくなかれ全戸が停電した。電源を1箇所の発電所に依拠し、補完の選択肢がない。これは安全保障上の手抜かりだろう。また原発が停止中であることが問題にならなかった。原発が動いていれば全戸停電という事態は防げたのではないのか。これを通信に置き換えると、通信施設の源を襲撃されたら、ほぼ全ての日本の通信が途絶えるということである。
▲空港で夜を明かした旅客の過半が外国人だった
他方、関空には2000人のツーリストが残されていると最初、報じられたが、実際には7800名もいたのだ。
メディアは立ち往生した旅客の弁当とか水の配給の画面つくりをしていたが、被災人数の掌握でできていなかった。そればかりか、非常食のストックがあまりにも少なかった。
脱線だが、六年前に体験した筆者の個人的経験を書く。
北京から成田便に搭乗したところ、「関東方面が嵐のため」とかの理由で、いきなり関空へ着陸した、空港ロビィでの宿泊を余儀なくされた。後日判明したのは午後十一時前に成田に着けそうにもなく、途中の関空に着陸したのだった。その説明を中国の飛行機会社は説明しなかった。
配給されたのは寝袋と一万円の見舞金。そして翌朝の食事券。出発はなぜか昼過ぎになるという。ところが、百人近くいた中国人旅客は、早朝にいなくなっていた。中国人の喧しい抗議に対応できず、別の手だてを用意したらしかった。要するに「ゴネ得」なのだ。
今次、関空で何が起きていたか。
実は700名の中国人ツーリスト、250名の台湾からのツーリスト、そして70名の香港人(それぞれパスポートが異なる)。千名以上の旅客は、中国系だったのである。
▲中国の大阪領事館は迅速に対応した
中国の大阪領事館はただちに行動を取った。バスをチャーターして関空へ派遣し、中国人ツーリスト選別し、交通アクセスの地点へと運んだのだ。しかも台湾客には「あなたが中国人であることを認めたら乗せてやる」と差別した。
これは台湾で問題となって台湾のメディアが騒いだ。
在日台湾機関はこうした措置をとらなかった。このため中国系の台湾メディアが、中国側の差別待遇を攻撃するのでなく、駐日大使の謝長挺が無能だと、『中国時報』などは、このときとばかりに攻撃した。
幾つか思い出すことがある。
東日本大震災のとき、中国は新潟空港などにチャーター機を飛ばし、十万人とも言われた在日中国人を中国各地へ手際よく運んだ。在日大使館に司令塔があるのだ。
リビアでは、カダフィ暗殺、政府壊滅の時に、飛行機、フェリー、バスなどありとあらゆる交通手段をチャーターして、じつに3万6000名いた中国人を救出した。
中央アジアの小国キルギスで暴動が発生したおりには、奥地のオシェというキルギス第二の都市に四機のチャーター機を飛ばして、500名いたとされる中国人を救出した。
これが可能となるのは、逆に言えば外国にいる中国人の動向さえ、出先の外交機関が把握していること、携帯電話の連絡網があること、つまり防犯カメラを全土に張り巡らせて、携帯電話の会話さえも防諜している国だからこそ可能なのだが、基本的に中国人の多くが軍事訓練をうけていて、危機にいかに対応できるかを、中国では日頃から実践しているからではないのだろうか?
デジタル社会、次世代通信機器や半導体開発で、もはや日本の優位はあとかたもないという実態が露呈したのである。