拝啓 私達貫兵団独立歩兵第三六七大隊の生還者三百余名が亡き戦友六百余名をボルネオに残して奇蹟的に大竹港に帰還してから早二十五年目、全く夢のように過ぎ去りました。
御遺族の方々!! 生還者の皆さん!! 其後御障りは御座いませんか謹んで御伺い申上げます。
御遺族の方々には、ひたすら頼りにしておられました夫や御子息、或は又御父上を遙か彼方のボルネオの戦野に失われまして嘸かし御悲歎にくれられた事と拝察申上げると共に、戦後の酷しい状勢の下で苦難の連続であった事と心から御同情申上げます。
扨、私達生還者にとりまして運命のまま奇しくも生還し得ましたとは言うものの、灼熱の下、下痢嘔吐やマラリアの高熱に悩まされ乍ら連日連夜叩き付けるように降るスコールに軍衣の乾く暇とてなく、道なき道を切開きつつ昼なお暗いジャングルを或は又そそり立つ断崖を数百里月余に亘り、一口の粥も啜りえず歩き通した再度の『死の行軍』と言う生涯体験することの出来ない大きな艱難辛苦に耐え、運よく生還致しました。
そのようなボルネオを私達は忘れようとして忘れることの出来るものではありません。それ故私達生還者は運命のいたづらと言いましょうか髪一重の差で幽冥境を異にした亡き戦友の冥福を、遅まき乍ら全大隊の生還者が相寄り相集まって衷心より祈念し霊を慰めたいと願わずには居られません。
当時のあのボルネオと同じ酷暑の侯を選び左記の通り慰霊祭を斎行致したいと計画一致しましたので、私達有志の微意を御汲取り下さいまして御遺族の万々と共に生還者の皆さんも萬障御繰合せの上是非とも御参列下さいますよう御願い申上げます。準備の都合もありますので同封の返信用ハガキに参不参につき来る八月十日迄に左記旧所属隊の世話人ままで御回報下さいますよう御願申上げます。
萬一御遺族の方で亡くなられた方の所属隊の判らぬ方は大隊本部世話人まで御回答下さい。
・・・所属隊毎の連絡先表 省略(当ホームページ管理人)
記
一、日 時 昭和四十五年八月二十三日(日曜日)午前十時斎行
一、場 所 兵庫県高砂市荒井町荒井 荒井神社(広瀬隊長宅)
明石・姫路方面よりは「山陽電車荒井駅」下車西へ四百メートル。
マイカーで来られる方は第二神明道路の「神吉」インターチェンジにて下り、
真直ぐ南へ一直線に山陽電車「荒井駅」前迄出て西へ四百メートル。
一、会 費 二、000円也(生還者のみ)当日御持姦願います。
一、御願い
万一生還者の方で御参列不能の方は慰祭霊諸経費として御浄財を御寄附頂ければ誠に有難く存じます。
御浄財を頂いた御不参の方には追って各隊世話人より「英霊録」と「生還者名簿」を御送り申上げます。
一、附 記 ご遠方の方には宿泊準備を致しておりますので、返信用ハガキにて御遠慮なく御申出で下さい。
昭和四十五年七月二十五日
独立歩兵第三六七大隊慰霊祭世話人一同
殿